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2009年6月25日 (木)

若松町にて

Mienaitorii この街というのは外れにある。
確かに自分の記憶ではそうなっている。

昔も今も風俗店が立ち並ぶ路地があって、一見行き止まりと思えるその路地の先は、
遥か上空にポツンと建つ寺院の裏手へ続く石段になっている。
長い石段を登ったガケの上は、下町を見下ろす墓地である。
だから、まっすぐ階段を上がっていく人は滅多にいない。
夜ともなれば、たくさんの人影が路地の奥でユラユラと曲がる。
そういった曲がり角はガケ下一帯にあって
面白がって曲がっていると、又フリダシに戻ったりする。

路地を入ってちょっと行った右には、オスワ様の石段がある。
神社の境内には、時おり足のない傷痍軍人が座っていて、
やや音程の狂ったアコーディオンを弾いていた。
そんな記憶もある。

ネオンの谷間にある遊戯場で、同い年の従兄弟と遊んだのは
もう40年くらい前だったかもしれない。
金物店の息子である彼は、昔、卓球の選手だった。

その卓球場は1回きりしか行かなかった。
入り口の良く分からないビルの2階の1室にあった。
裸電球が一つだけ。
異様に薄暗い室内で、打っている球さえ、ときどき見えなくなる。
何でこんな暗い場所で、と随分不思議な気がした。

入る時に降っていた霧雨は、上がっていた。

結局引き分けになったと思う。
ゲームが済んで店を出ようとすると、
入り口はもう閉めたから、非常階段から出るように云われた。
非常口を開いたとたん、目の前にまぶしいネオンサインの点滅。
余りにまぶしくて、何色だったかまで思い出せない。

夕暮れの街角は、すでに変容を始めており
風景全体が滲んで、建物のタテとヨコがどうもおかしい。

足元の方に、あるはずのない鳥居が見えた。

(2009.06.25/イチロー記)

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コメント

イチロー様
おはようございます。
幼い頃、父親が病気がちで、横須賀共済病院への入・退院を繰り返していました。
当時、見舞いに行くには、中央駅から諏訪神社前を通る経路がお気に入りでした。
あの辺りは、昼夜の顔が違うのは当然のこととして、「おとりさん」になると、唐突に峻厳な装いを纏ったので、戸惑いを覚えたものです。

卑俗から聖へ。

傷痍軍人、いましたね。「さいかや」の前でも見掛けたものです。川崎駅前にもいたのは、別人でしょうが、よく似て見えたものです。当時の(寂れた)京急沿線主要駅には、つきものだったような気がします。
記憶の糸がベクトルを失います。

横須賀は味の街でもありました。「さいかや」前の、屋台の焼き鳥屋。幼い頃、両親に手を引かれ、そこで数本にかじりついた後、「さいかや」の地下の立ち寿司を摘むのが、最高のディナーでした。

やや長文となりましたが、自分のことを語ることで、「イチローさま」から「イチローさん」へ近づければ、と願います。

数年前、岩崎さんから取材を受けたことがあります。そういう仕事です。

他の皆様のコメントも拝読させていただくと、大変に魅力的な方々のようです。縁はこうして、広がって行くものなのですかね。

投稿: アイピーオー | 2009年6月25日 (木) 05時41分

(*^-^)アイピーオーさん、こんにちは。
早速のコメントありがとうございます。

>諏訪神社前を通る経路がお気に入りで・・
以前は令嬢○○○の看板もランドマークで(笑)、
あそこは共済病院へ行く近道コースですからね

>岩崎さんから取材を受けたことが・・

おお。そうでしたか!
私もアイピーオーさんのハンはIPOの事かな、と感じておりました。
彼の主宰するライター集団に属して、株式関係等の経済記事を
書いてました。
最近は不況で仕事が減って趣味に入れ込みがちですが。
今後ともよろしくお願いします(笑)。

さて話は変わりますが今朝はびっくりする事が起きました。
家の隣のアパートの鍵が壊れ、
業者を呼んだら現れたのはいつもと違う男。
それが記事に書いた卓球の相手だったんです。
話したのは10年ぶりくらいで。
こういうこともあるんだナ、とつくづく感じた次第です。

この記事は、米が浜を歩き回ってた頃に撮りためた一枚の写真が
きっかけでした。
削除しようとして初めて鳥居が写っていることに気付いたんです。
影の中の鳥居。
そこから蘇った記憶のかけらを拾いました


投稿: イチロー | 2009年6月25日 (木) 14時45分

いつも散策者の視界と視線には感心しています。それもこれも谷戸という「場」の磁力によることも大なのでしょうけれど、やはり散策者あるいは観察者が 何 を視ようとしているかにかかっているのでしょう。
未だに行ったことなき「場」の空気を何故に感ずるのか 

あ~、これは学生時代をすごした落合や椎名町界隈の空気感だな~ まったくそのままだ との思いを多くの画像と散策記から与えられますよ。

昨年、自転車で訪れた学生時代のその街は、驚くほど昔のままで 僕は 平衡感覚を失った蜘蛛のように暫く 街を彷徨ったものでした。

投稿: gurikonoomake | 2009年6月30日 (火) 12時22分

gurikonoomakeさん、こんばんわ~。

やはり、ものは見ようによって変わるものだと思えます。
知らなかったことを知ったり、気付かなかったことに気付いたりすると
世界は幾分違って見えてくる。
それは理屈抜きに面白い経験です。

谷戸世界も、見ようとしなければ、
ただの不便な土地でしかなかったでしょう。

しかし落合、椎名町近辺とどこか似てるというのは
興味ある話ですね。
実は学生時代、半年だけ東長崎に下宿してましたんで。

gurikonoomakeさんの意外なところに「異界」を
見てしまう眼力、対象選択センスもスゴイと感じます。(*^m^)。

で、こうした観察眼というのは、お互い実生活では殆ど
役に立たないものであったりするわけですが(笑)。

投稿: イチロー | 2009年7月 1日 (水) 01時10分

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